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自己啓発や聖書に関する事等掲載中。引用聖句:新改訳聖書©新日本聖書刊行会 英文聖句:New International Ver.

基本権保護義務論における「過少保護禁止」の法的構造と統制密度

 小山剛先生の『基本権保護の法理』(成文堂、1998年)90頁以下をもとに、先日は、過剰侵害禁止の三原則についてまとめました。

1.適合性の原則
 侵害による基本権の制限は、被侵害者の基本権法益にとって適合的でなければならないものの、それに先行して、侵害の目的が合憲でなければならず、さらに、適合的であるかどうかは、侵害により立法目的が完全に実現されることを要求してはおらず、侵害の手段が根本的に非適合的ではないかを問題とするにすぎない。


2.必要性の原則
 立法者が用いた手段が肯定されるのは、より制限的でない手段、いわゆるLRA(Less Restrictive Alternative)を選択することができなかった場合である。


3.狭義の比例性の原則
 侵害者の基本権法益の侵害と、この侵害による制限によりもたらされる利益とが、均衡を失しないことを要求する。


 ここで、基本権保護義務論での法的三極関係における「過少保護禁止」の原則は、一部学説にあるといわれるような「過剰侵害禁止の鏡像」であるか、検討してみました。

 過少保護禁止には、上記三原則に該当するような構成要素は存在しないようです。理由は、とても長くなりますので割愛しますが、ロッパースによる適合性・必要性原則適用の否定や、比例原則についてのベッケンフェルデとヘルメスの意見の対立を中心に、小山剛先生の『基本権保護の法理』93頁以下に記載されています。

 過少保護禁止については、以下の三種の統制密度があるとのことです(前掲107頁以下)。

1.明白性の統制
立法者の判断に対して加えられるもっとも緩やかな統制であり、「明白に違反する」場合に限られる。
※ドイツにおける「オゾン決定」が明白性の統制が加えられた例

2.厳格な内容統制
統計的データや他諸国の学説・判例等の経験に基づき独自の予測を形成し、自らの予測と対比して立法者の予測を統制する。

3.主張可能性
法律の制定過程の適切さに着目するものであり、上記二基準のように予測の内容ではない。具体的には、立法者が法律の制定当時での現実的な諸問題についての知識を正確かつ十分な手段で入手していたかどうかに着目する。もし、それが肯定されるのであれば、立法により経済的展開が仮に誤った方向に進んだとしても、その誤りは甘受されなければならない。



 ここしばらくの間、過剰侵害禁止や過少保護禁止の法的構造について研究してきましたが、今後はそれらにより構成される基本権保護義務論をベースとして、求められる具体的な立法政策について研究してみたいと思います。その研究過程において、適時文献に戻りつつ、基本権保護義務論のさらなる理解に努めたいと思います。こうして、決して楽ではないものの、興味深い分野についてそれなりに楽しく研究できる恵みに感謝します。

 
I will be glad and rejoice in your love,
for you saw my affliction
and knew the anguish of my soul.
(Psalm 31:7)

あなたの恵みを私は楽しみ、喜びます。
あなたは、私の悩みをご覧になり、
私のたましいの苦しみを知っておられました。
詩篇31:7)