今朝は、小山剛先生の『基本権保護の法理』(成文堂、1998年)、特に、84頁からの基本権保護義務の「裁判的統制」を形成する二つの要素についてまとめていきたいと思います。
事例として、第二次堕胎判決(1993年5月28日)と、オゾン決定(連邦憲法裁判所第一法廷の委員会による、1995年7月の法改正に対する異議申立不受理決定)を取り上げておられます。これらの事例から、基本権保護義務の裁判的統制を形成する以下の要素が抽出されています。
1.過少保護禁止原則
「あるいは一般的に、『対抗する法益に配慮した上で適合的かつ実効的な保護』(オゾン決定)を要求し、あるいは具体的に、中絶に対する違法という評価と法的禁止等(第二次堕胎判決)を要求する。」(注1)
2.統制密度
「審査の厳格性にかかわるものであるが、第二次堕胎判決とオゾン決定とでは、明らかに別の統制密度が用いられている。」(注2)
このように、基本権保護義務の裁判的統制は、「過少保護禁止原則と統制密度との交差によって決定される」(注3)とのことです。
「過少保護禁止」という言葉は、ドイツの連邦憲法裁判所における上記第二次堕胎判決で最初に用いられたものだとのことで、1980年代から学説では過少保護禁止という概念は存在していたものの明確な輪郭線を与えてはいなかったようです(注4)。
「確かなのは、『過少』が『過剰』の対として選択されたことであり、この対概念は、過少保護禁止が過剰侵害禁止と、いわばコインの表裏の関係にあるという印象を与えることから、過剰侵害禁止の内実を整理しておく」(注5)必要があると思われます。
注1、2、3)小山剛『基本権保護の法理』成文堂、1998年、89頁。
注4)小山剛・前掲90頁。
注5)小山剛・前掲90-91頁。
では、次回は、過剰侵害禁止の内実についてまとめていきたいと思います。
法律に関する知識・経験・基礎学力全てにおいて力不足を実感しますが、そういう私でもここ数年で多少は法律論のまねごとのようなことを述べることができるようになり、自分の新たな境地を開拓できましたから、人生40年過ぎにおいて大いなる恵み、大いなる喜びです。
私のような社会人にも学ぶチャンスを長年にわたり提供し続けてくださった慶應義塾大学さんには、本当に感謝ですね。これ以上、私は何か慶應大学さんに望む必要があるでしょうか・・・。
The LORD is my shepherd,
I shall not be in want.(Psalm 23:1)
主は私の羊飼い。
私は乏しいことがありません。(詩篇23:1)