言い尽くせない感謝

自己啓発や聖書に関する事等掲載中。引用聖句:新改訳聖書©新日本聖書刊行会 英文聖句:New International Ver.

米国ステイト・アクション法理の問題点

 昨日は教会に足を運び、牧師先生などを通じて、「できない『理由』ではなく、『口実』を設けてはいけませんよ」「成功している(と思われる)他人を妬んではいけませんよ」など、大切なことを勉強させていただきました。

 また、久しぶりにゆっくりと教会で時間を過ごすことができましたので、さまざまな方とお話させていただける機会をいただいたのですが、ご自身でおっしゃらないだけで、皆さんその分野で優れたキャリアや実績をお持ちの方が少なくないことを知るところとなりました。本当に皆さん、謙虚な方々で、かつ、他人をリスペクトしておられる雰囲気に溢れておられるところから、私自身が自省する思いです。

 今朝は、私の論文に米国ステイト・アクション法理(State Action Doctrine)を適用する上で、その法理自体に対する批判を勉強していました。参考としている文献を記録として記載します。


松井茂記アメリ憲法〔第5版〕』有斐閣、2004年、132頁以下。
松井茂記日本国憲法〔第3版〕』有斐閣、2007年、331頁以下。
榎透『憲法の現代的意義 ― アメリカのステイト・アクション法理を手掛かりに―』花書院、2008年、94頁以下。
君塚正臣『憲法の私人間効力論』悠々社、2008年、207頁以下。

 榎先生の批判としては、以下の3点を述べておられます。

●ステイト・アクション法理の一貫性の欠如
 公私区分の線引きに成功していないため、「国家からの自由」と「私的権力からの自由」という2つの「自由」の間で揺れ動く性質をステイトアクション法理が内包しているため、ある私人の別の私人に対する人権侵害行為に当該法理の存在を見いだすかどうかの予測が困難である。

●裁判所のステイト・アクション判断の拡大
 本来であれば適用されるべきではない私的組織にまで憲法の制約が及んでしまい、実際のステイト・アクション判断が、公私区分を崩し、「国家からの自由」を維持していない。

●人権の対国家性を崩さない
 ステイト・アクション法理が「国家からの自由」と「私的権力からの自由」の交錯した状況を作り出しているにもかかわらず、人権の対公権性を崩しておらず、新たな「国家」像を踏まえた人権理論を構築する必要があるのに、公私区分や「国家からの自由」にこだわっている。
※榎透『憲法の現代的意義』花書院、2008年、95-96頁。


 君塚先生も、国家が関わるとはどのようなケースかの認定がなかなか難しく、国家の行為として見做され、或いは国家の機能として見做される行為があるということがまさに私人間効力を巡る決定的な問題になるが、その点の基準は明らかではない、と述べておられます。
※君塚正臣『憲法の私人間効力論』悠々社、2008年、210頁。

 ステイト・アクション法理の日本における主唱者である松井先生も、次の通り述べておられます。

 「難しいのは、州が問題の行為を禁止していないということだけで、州がその行為を奨励している、あるいは授権しているとみることができるかどうかである。」
松井茂記アメリ憲法〔第5版〕』有斐閣、2004年、136頁。)

 君塚先生が「明らかに他の憲法学説とは異なり、松井説には憲法ないし政府・国家の射程を限定する姿勢が強く見受けられる」(君塚正臣『憲法の私人間効力論』212頁)と述べておられる通り、松井先生は「公」「私」二分論を強調しているように思います。

 私の論文においては、インターネット検索事業者に対する「国家検閲」については、ステイト・アクション法理の適用による私人の人権保護の論述をすることは可能であると思われます。

 しかしながら、インターネット検索事業者の表現の自由を援用したさまざまな表現行為(「グーグル八分」、「グーグル・セーフサーチ」、「ストリート・ビュー」、「意図せず自動ネット巡回ロボットにキャッシュされ不特定多数の閲覧に供される問題」)を制限し私人の人権を保護する問題に、どのように当該法理を適用するべきかについては、容易に論述できるわけではない課題であると解しています。

 今後、この困難な課題を解決する努力をもっとしてみます。ただし、自分の能力や置かれている立場を過信することなく、頭を垂れて勉学に努めたいと思います。


"Even the stork in the sky knows her appointed seasons,
and the dove, the swift and the thrush observe the time of their migration.
But my people do not know the requirements of the LORD. "
(Jeremiah 8:7)

空のこうのとりも、自分の季節を知っており、
山鳩、つばめ、つるも、自分の帰る時を守るのに、
わたしの民は主の定めを知らない。
(エレミア書 8章7節)