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自己啓発や聖書に関する事等掲載中。引用聖句:新改訳聖書©新日本聖書刊行会 英文聖句:New International Ver.

平成不況第1局面(90年代初頭~97年春)から学ぶ

 慶應義塾大学経済学部 北村教授の文献

北村洋基『岐路に立つ日本経済』大月書店、2006年。

の一部、平成不況第1局面(90年代初頭~97年春)について研究させていただいておりました。

 以下の通り、前掲の文献から私なりにまとめてみました。さまざまな角度から日本経済について分析しており、今後の日本経済や政策を検討する上でとても価値のある文献だと思いましたので、おすすめの一冊です。


1. 1990年代の日米関係:日米包括経済協議(1993年)より
(1) 日米相互の経済構造の問題を協議し、解決を探るという双方向性無し。
(2) 円高放置とスーパー301条適用を圧力とした日本側の一方的譲歩による決着。
(3) アメリカの業界の利害を直接反映した個別分野についての市場参入を、数値目標つきで事実上日本に受忍。

2. 平成バブル崩壊についての当初の認識
(1) バブル崩壊はかえって日本経済を健全化するもの。
(2) 地価の下落は住宅着工件数を増加させるであろうという楽観的な予測。
(3) 設備投資にたいしては、製造業大企業を中心に企業は財務体質を強化していることから深刻な問題とはみなさず。不動産業倒産増加が金融機関に与える影響についても楽観的。

3. 1990年代初頭の「構造改革」論の背景
(1) 過労死に象徴される労働、働き過ぎ・働かせすぎの問題。
(2) 地価高騰による住宅問題の深刻化。
(3) 日本の異常な国際競争力にたいする欧米諸国からの反発。
→『ゆとり社会の基本構想』(91年5月通産省)
時間的なゆとり 空間のゆとり 7从僂里罎箸

4. 「平成大不況への突入」:1990年代の日本経済を振り返る
(1) 湾岸戦争による石油価格の上昇とインフレ懸念、それを未然に防ぐための金利の引上げ。
(2) 日米経済摩擦と円高による輸出の困難化。
(3) 高金利化→設備投資意欲の減退。株価の低迷→企業資産の含み益減少、収益の悪化へ。

5. 1990年代の新自由主義構造改革論と、「新時代の『日本的経営』」提言
※経済構造のメイン・システムからサブ・システムまで含めた全面的な構造改革の必要性
(1) 日本企業のグローバル化により、国際環境に対応したシステム改革の必要性が認識。
(2) 平成大不況と国際競争力の低下について、バブル崩壊の後遺症だけではなく日本の経済システム自体が問題視。
(3) 「新時代の『日本的経営』」(1995年5月経団連):長期雇用者と流動化させる雇用者との組み合わせや労働規制の緩和という、日本の経済構造のメイン・システムの一つを変革することを宣言したという意味で画期的な提言。

6. 情報資本主義の新段階と産業構造
(1) ハイテク不況と、ウィンドウズ95発売による不況からの脱出。
(2) 海外現地生産の本格化と世界的分業構造形成により、製造業の勢い無し。
(3) 公共投資中心での景気回復政策のため、ゼネコン・建設業がいっそう肥大化。

7. まとめ 
 「小手先の手直しをしながらもなお新自由主義的改革を強化する道を突き進んで行くのか、それとも安全と安心、信頼と共同、連帯に基礎づけられた日本経済へのギアチェンジをするのか(北村洋基『岐路に立つ日本経済』、256頁より)」について、今、問われている。


 このような研究の機会を与えてくださったことに、心より感謝します。


For who makes you different from anyone else?
What do you have that you did not receive?
And if you did receive it, why do you boast as though you did not?
(1 Corinthians 4:7)

「いったいだれが、あなたをすぐれた者と認めるのですか。
あなたには、何か、もらったものでないものがあるのですか。
もしもらったのなら、なぜ、もらっていないかのように誇るのですか。」(コリント第一4:7)