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1990年代の新自由主義的構造改革論と、「新時代の『日本的経営』」

引き続き、北村教授の文献

北村洋基『岐路に立つ日本経済』大月書店、2006年。

の研究についてです。そろそろ一区切りつけようと思います。以下、この文献における159頁以下から引用させていただきます。

 「規制緩和、市場原理による構造改革という思想と政策は80年代初頭に台頭し、一定の進展をみせたが、しかし80年代は経済構造のメイン・システムには手をつけず、また金融の自由化や土地規制の緩和等はバブル経済に帰結した」(※1)

のに対して、90年代の新自由主義構造改革

 「経済構造のメインシステムからサブ・システムまで含めた全面的な構造改革の必要性が主張されるようになったのが特徴」(※2)とのことです。

 その原因としては、次の2点があげられます。

第1:日本企業のグローバル化により国際環境に対応したシステム改革の必要性が認識されはじめたこと
第2:わが国が平成大不況となり、さらには国際競争力の低下が懸念されることは、バブル崩壊の後遺症だけではなく日本の経済システム自体が問題視されはじめたこと


 
 そして、いよいよ1995年5月に経団連によって、「新時代の『日本的経営』」が公表されました。
これは、「派遣切り」「ワーキング・プア」など今日の雇用労働状態の問題を生み出す原因となったともいわれる、極めて重要な提言でした。

 従来の日本的経営の理念は「人間中心(尊重)の経営」と「長期的視野に立った経営」であり、普遍性があり、この両者を基本的に尊重するものの、時代に合わせて創造的に発展させるために、人材の流動化を図ることが具体的に提起され、「長期雇用者と流動化させる雇用者との組み合わせ」や労働規制の緩和という、日本の経済構造のメインシステムの一つを変革することを宣言したという意味で画期的でした(※3)。

 この宣言がなされた時点では、従来の日本的労使関係を全面的に否定してはいませんでしたが、その後の平成大不況第2局面(1997年春~2000年末)以降では、そういった日本的労使関係の良さ・素晴らしさを事実上かなぐり捨てはじめる、日本企業の姿があらわになってきます。

 アングロサクソン的とも思われる今日の日本経済や労働問題は、この経団連による「新時代の『日本的経営』」なしには語れないかもしれませんね。なにごとも良い面もあればそうでない面があるのでしょうが、この舵の切り方はまさに大転換ともいえるように思われます。


※1,2)前掲・159頁
※3)前掲・162頁


if he says, 'I am not pleased with you,' then I am ready; let him do to me whatever seems good to him."
(2 Samuel 15:28)

もし主が、『あなたはわたしの心にかなわない。』と言われるなら、どうか、この私に主が良いと思われることをしてくださるように。」
(2サムエル記15:26)