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「平成大不況への突入」:1990年代の日本経済を振り返る

 引き続き、北村教授の文献

北村洋基『岐路に立つ日本経済』大月書店、2006年。

の研究についてです。以下、この文献における152頁以下から引用させていただきます。


 1990年代初頭から実体経済が悪化し、平成大不況へ突入した原因は何だったのでしょうか?もちろん、昨日まで記載したバブル崩壊もその大きな要因の一つです。

 さらには、「湾岸戦争による石油価格の上昇とインフレ懸念、それを未然に防ぐための金利の一段の引上げ等の景気引き締め、そして日米経済摩擦と円高による輸出の困難化などが複合的に絡んでいた」(前掲・152頁)とのことです。

 すなわち、

・高金利化→設備投資意欲の減退
・株価の低迷→企業資産の含み利益の減少、さらには不利益となり収益の悪化へ

 さらに株価低迷により、「転換社債の期限が到来したときに株価の下落とぶつかり、株式に転換されるはずの社債が転換されないで多額の償還資金を支払わなければならなくなった」(前掲・152頁)ため、さらに企業収益を悪化させました。

 そのため、バブル崩壊による不動産業の倒産と並んで、財テク倒産も1991年から増加しています。

 また、1992年は、「日本の情報関連ハイテク産業が初めて深刻な不況に突入した年」(前掲・166頁)であり、情報関連投資が大幅に減退しています。

 それは単に平成大不況による設備投資意欲の減退ということが理由だけではなく、「従来の情報化投資はきわめて巨額にのぼったがその割りに使い勝手が悪く、効果が十分ではないという不満がユーザーに強かった」(前掲・167頁)ことからユーザー側の情報化投資に対する要求が変化してしまい、それに対する日本の情報産業側の対応が遅れてしまったこともあげられます。

 すなわち、「情報技術とその利用についての構造的変化があり、それが平成大不況への突入とが重なったために、情報関連ハイテク産業は危機的状況に陥った」(前掲・166頁)のでした。


 このように1992年になると、実体経済の不況ははっきりと実感できるものになってきていますが、追い討ちをかけるように金融危機不良債権の問題が拡大してしまいました。

 株価の暴落は、一般企業に限らず金融機関の収益をも悪化させ、当時の首相は株式市場の閉鎖や公的資金投入をも覚悟したといわれるほどの問題となりました。

 そのため、金融システム安定化策を92年8月18日発表し、不良債権処理などに関する対策がとられた中、93年1月に新規設立された共同債権買取機構に債権を売却した金融機関は債権額と売却額との差額を損失計上できる枠組みのもとで、ようやく不良債権処理が始まっています。

 さらには、92年8月28日に10.7兆円の「総合経済対策」という過去最大規模の景気対策が実施されました。そのうち、公共投資が8.6兆円であり、「公的資金を活用した地価維持政策という側面」(前掲・153頁)を持つ公共用地の先行取得が1.5兆円分組み込まれていました。
 
 「金融機関が株式の45%を保有しているという事態のなかでの株価の急落は、銀行経営を圧迫しただけではなくBIS規制を93年末までに達成することを義務づけられていた」ことから、いわゆる自己資本比率8%ルール(地方銀行は4%)達成には、こうした緊急の経済対策は必須だったのでしょうね。


 しかしながら、不動産、建設業、ノンバンクへの金融機関の融資に対する総量規制は、「農協系金融機関は除外され、またノンバンクへの融資は報告義務にとどまっていることなどもともと抜け穴の多いものであったが、90年4月に開始されたあと、早くも91年12月には解除され、これらの業種への融資が再び増加」(前掲・154頁)したことから「追い貸しによる問題の先送りと不良債権の積み増しというバブル崩壊の後遺症をいっそう深刻化させること」(前掲154頁)につながりました。

 
 以上のように、「平成大不況の特長は、何よりも金融不況と実体経済の不況との複合不況として現われたこと」(前掲155頁)でした。
 


 おそらく表面化した問題と結果、とくにノンバンク等への金融機関の融資についてはは氷山の一角であり、水面下では何倍もの争いがあったでしょうね。想像するだけで恐ろしいものがあります。 

”Better a dry crust with peace and quiet than a house full of feasting, with strife.”
(Proverbs 17:1)

「一切れのかわいたパンがあって、平和であるのは、ごちそうと争いに満ちた家にまさる。」
箴言17:1)