言い尽くせない感謝

自己啓発や聖書に関する事等掲載中。引用聖句:新改訳聖書©新日本聖書刊行会 英文聖句:New International Ver.

日本でも寡占的インターネット検索事業者になりそうな報道が・・・。

 昨日は、米国グーグルの開発した検索エンジンを、ヤフージャパンが採用するというニュースが報道されていました。

 TVを見ていましたら、できれば年内にはヤフージャパンの検索エンジンをグーグルの技術に変更したいとのことでした。

 一般の方にとっては、それほど大きな問題ではないかもしれません。

 事実、私もヤフージャパンの検索エンジンはほぼ使っていませんので、私個人の日々の生活において直接影響があるものではありません。


 しかしながら、本報道については、私の慶應大学法学部通信教育課程における卒業論文テーマそのものに関連するものでしたので、記録として留めておきたいと思いました。

 卒業論文では、寡占的インターネット検索事業者にまつわる法的諸問題等について長々と論じています。

 検索エンジンに市民が依存している今日において、寡占的インターネット検索事業者が登場することの問題点は概ね以下の通りです。


検索エンジンに登場しない情報は、市民からみて知られない情報(存在しないもの)と同様になる可能性がある

・検索結果が画一的になると、多様な情報が流通するか(情報の多様性の問題)

・検索結果に依存する市民の「知」が、検索エンジンによって形成されることへの危惧

・寡占的インターネット検索事業者による独自のフィルタリング(検閲)が行なわれる可能性がある

検索エンジンの政治利用


 以上のことから、寡占的インターネット検索事業者による検索結果を評価する第三者機関の創設等を検討する価値があると思われます。

 東京大学の奥平康弘名誉教授が、

「マスメディアは第四の権力ともいわれるが、グーグルという企業は、これまでの権力概念では捉えきれないような存在だ。現代の表現の自由の問題は、こうした権力的な私的機関に反市民的、反社会的な行為があった場合、国家がもう少し大胆に前に出ていくべきかどうかが問われており、グーグルによって表現の自由がうまく機能しているのかを見極めることが重要だ。グーグルによる情報の選別が、何によって支えられているのか、今後の憲法学が切り込むべきテーマだろう。」
(芳野創「膨張する巨大IT企業の行方」NHK取材班『グーグル革命の衝撃』NHK出版、2007年、232頁以下。)


と述べておられますが、憲法学上の新たな表現の自由の問題として、寡占的インターネット検索事業者にまつわる法的諸問題をさらに研究していく価値はなくはないと思われます。



 そうはいっても、ビジネス上の提携話は最終的にどうなるか不透明なところがありますし、他ポータルサイトのようにグーグルの検索結果をそのまま提示するのではなく、ヤフージャパンなりに検索エンジンに手を加える可能性も否定できません。

 ですから、本報道については、今後をしっかりと見守りたいと思います。


"He who answers before listening ― that is his folly and his shame. " (Proverbs 18:13)
「よく聞かないうちに返事をする者は、愚かであって、侮辱を受ける。」(箴言18:13)



<記録保存用>

卒業論文題目:インターネット検索事業者による「検閲」と表現の自由

卒業論文の要約

 本稿は、寡占的インターネット検索事業者による「検閲」と表現の自由の問題における二つの側面である、「インターネット検索事業者自身による検閲」と「インターネット検索事業者に対する国家検閲」について考察した上で、私人間での表現の自由の対立について、その解決策の私見を述べたものである。

 インターネットの普及により、市民による低コストでの情報受発信が可能になることで多様な情報が日々生産され流通する中、自らが欲する情報あるいはそれに近い情報を瞬時に入手できる「検索エンジン」を提供しているのが、インターネット検索事業者である。検索エンジンが社会のインフラと化し、検索エンジン市場における特定のインターネット検索事業者のシェアが著しく高くなったことにより、寡占的インターネット検索事業者が巨大な社会的権力を持つに至った。

 寡占的インターネット検索事業者は、検索エンジンにおける検索結果の表示順位や内容を恣意的に編集し検索結果として表示することは、自らの表現の自由であると主張する。一方、検索エンジン利用者から見れば、外部からの介入なしの検索事業者による情報統制と操作は、検索事業者による「検閲」であり表現の自由の侵害であると主張する。
 
 本稿において「奉仕する自由」論、「ステイト・アクション」論 、「基本権保護義務」論の三方向から検討した結果、インターネット検索事業者において、第一に、表現の自由が正しく機能していないこと、第二に、個人の自律的選択を保障する市民の人権を侵害していること、第三に、「国家検閲」が行われ国家による情報統制と操作の虞があることが判明した。以上より、検索事業者による「検閲」行為は市民の表現の自由の侵害であり、無限定な表現の自由を抑制する作為義務が国に課せられるとともに、検索事業者への実質的な「国家検閲」は市民の表現の自由を侵害するものであると解する。

以上