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ドイツを母国とする「国の基本権保護義務論」の考察 その2

 (・・・ドイツを母国とする「国の基本権保護義務論」の考察 その1 から続く)

 小山先生の以下の文献から引用させていただきながら、ドイツにおける基本権保護義務論を概観していきたいと思います。

小山剛「イーゼンゼーの基本権保護義務論[解説]」ヨーゼフ・イーゼンゼー(ドイツ憲法判例研究会編訳)『保護義務としての基本権』信山社、2003年、238頁以下。

 基本権の保護を「すべて国家権力の責務である」(1条1項)とするドイツ憲法の名文より、国家による保護義務は、「基本法制定後の早い時期から考え方としては存在しており、デューリッヒによる基本法一条一項の注釈と、人間の尊厳保護義務を基底においた私人間効力の基礎づけは、わが国においても、憲法13条や私人間効力問題に関連して、参照されてきた経緯」があります。

 実際にこの基本権保護義務論が、判例・学説、立法において正面から承認される契機となったのは、「国家は生命の保護義務を負う」とした1975年の連邦憲法裁判所第一次堕胎判決であり、その後テロリズムに関わる1977年のシュライヤー決定、原子力発電所の安全性に関するカルカール決定などによるとされています。

 その後、ドイツ憲法学において基本権保護義務に関するmonographが集中したのは1980年代後半ですが、基本権保護義務論の開拓者のお一人であり、その後の保護義務論の発展に道筋を与えた論者が、ヨーゼフ・イーゼンゼー先生です。

 基本権保護義務論における法的三極関係においては、国家は、被害者との関係では基本権の保護者ですが、加害者との関係では侵害者としての側面を持っています。イーゼンゼー先生が描いたこの法的三極関係と国家の二面性は、「保護義務の定義の本質的構成要素として確立」しているようです。

 イーゼンゼー先生の保護義務論の特徴については、小山先生は次の2点を挙げておられます。

 崑荵絢圈廚砲茲襦岼稻,平害」の射程をイーゼンゼー先生は非常に限定的に捉えていること。
◆岼汰粥甼畭綛餡箸砲茲詼鋻佑遼鋻佑紡个垢詁争の終結という国家任務に重心を置く」ことから、イーゼンゼー先生の保護義務論が、国家論優位型であること。

 この点につき、西原先生は以下の通り警告を発しています。

 「保護義務論は劇薬であり、使い方を誤ると、治安維持との関連における国家任務の組替え作業に直接の理論的正当性を提供する。」
西原博史「保護の論理と自由の論理」長谷部泰男・西原博史他編『人権論の新展開』岩波書店、2007年、299頁)

 さらに、西原先生は以下の通り述べておられます。
 
 「国家があえて保護しようとするものは、多くの場合―民主制の中においては多数派にとって―有益な結果をもたらす行為に向けた自由になりがちであるから、個人の自由を保護しているように見えるものも、その保護を実現する枠組み次第では、保護してもらえる自由と保護されない自由を峻別し、多数派にとって有意義な行動に個人を誘導するメカニズムとなる。」
(西原 前掲 300頁。)

 重ねて、

 「治安維持を目的とする活動において、実際には保護対象の選別による意識操作が行われているとするならば、これは二重の意味において個人の自律性を追い詰めていく。」
(西原 前掲 300頁。)

 と西原先生は批判しておられます。

 では、小山剛先生は、このような批判を受けつつも、国の基本権保護義務論をどのように日本に輸入し、展開しておられるのでしょうか。ちょっと疲れましたので(笑)、本件については次回へ持ち越しとします。

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 このようなエキサイティングな課題に取り組むことができる幸いに、心より感謝します。

 初めて卒業論文指導申し込みをした約一年前に、「半年後の再提出」の判定をいただき、一時ひどく感情を乱したことを今でもはっきりと覚えています。本来味わいたくない痛い想いを経験したから、今こうしてあるともいえます。これからも「上りザカあり、下りザカあり、マサカあり」だと思いますが、全て将来に対する必要な肥やしだと思って、時には受け入れたくないような現実も受け入れつつ、できる限り笑顔で前進していきたいと思います。


"Praise the LORD, O my soul, and forget not all his benefits" (Psalm 103:2)
「わがたましいよ。主をほめたたえよ。主の良くしてくださったことを何ひとつ忘れるな。」