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記録保存用レジュメ:グーグル・ストリートビューと「プライバシー保護」についての考察

 グーグル・ストリートビュー(略して「GSV」)について、大学関係の某勉強会で発表した時の資料を、下記の通り記録保存用として記載します。


 なお、最近世界各地で報道されている大きな問題は、下記「2.GSVについてのさらなる問題」についてですが、本発表では本題から若干はずれてしまうと思いましたので、軽く触れる程度にしました。

 たびたび当ブログで記載していますが、私は、長年にわたりグーグルの大ファンです。

 ですから、世界各地において、グーグルが無線ネットワーク上から個人情報を無断収集していた疑いをもたれている今回の件については、とても残念なニュースに思うとともに、事実関係について見守りたいと思っています。

 飲食店等の中で利用可能な無線ネットワーク上(Wi-Fiネットワークですよね)で、自分のパソコンを利用し電子メール等を利用していたら、知らない間にGSV用撮影車が近くを走っていて、自分のメールのIDやパスワードがGSV用データとともにグーグルのデータベースに記録・保存されていた・・・

・・・漫画かSF映画での話みたいですが、事実とすればかなり怖い話だと思います。

=========以下、記録保存用===================================================
●テーマ:グーグル・ストリートビューと「プライバシー保護」についての考察

●レジュメ
1.テーマ選択の経緯
 インターネット検索事業者グーグルは、住所や店舗名などのキーワードを入力して検索をした場合、事前にグーグルが公道を特殊な撮影装置を車体上部に設置した車を走らせて撮影した(不動産、通行人、街並みなどの)画像を360度のパノラマで閲覧でき、その場に行かずして現地の状況を鮮明に確認することができる「ストリートビュー(GSV)」を、世界各地で順次提供しはじめている(注1)。

 ところが、グーグルが当事者に何ら事前通告なく撮影した画像には、「帰宅して玄関先に立つ子供や、個人宅の内部状況」、「水着で日光浴中の女性」、「ホテルに入る男女」などの画像が、当事者の事前承諾なくしてインターネット上において閲覧の範囲・場所・時間の制限なしに不特定多数の閲覧に供されることや、顔への画像処理加工についても実際には全くなされていない場合もあり、位置情報や周辺画像などから人物の特定も可能であることから、プライバシー侵害の疑いが発生している。


2.GSVについてのさらなる問題
 グーグルは、GSV用情報を収集する際、無線ネットワーク上のWebトラフィック・データを無断で収集していたとして、米国で相次いで訴訟を起こされており(注2)、どの訴訟の原告も、グーグルによるデータ収集で影響を受けた人が訴訟に加われるように、集団訴訟の認定を求めている。


3.日弁連の意見書
 日本弁護士連合会はGSVに代表される「多数の人物・家屋等を映し出すインターネット上の地図検索システム」に関して、新たな地域への拡大を控えるとともに、「プライバシー保護の状況を調査監督し、プライバシー侵害のおそれのある行為については、当該行為者に対して是正勧告ができる、行政機関から独立性を持った 第三者機関を設置すること。」とする意見書(2010年1月22日付)を公開している。

 意見書では、「同意なく撮影した網羅的・大量の人物を公表する行為は、対象となる多数の市民の肖像権・プライバシー権の制約の程度を上回る撮影・公表の必要性・社会的有用性が認められない場合には違法である。」としている。


4.グーグルの反論
 グーグルは、自らの表現の自由や、GSVサービスを提供する営業の自由などを主張した上で、衛星技術の進歩を受けて、現代では砂漠の真ん中に居たとしても完全なプライバシーは存在しない(注3)と反論し、当事者が望まない画像が掲載されている場合は、グーグルに事後通報すれば、当該画像を削除する手続をとるとしている。


5.最高裁判例:「京都府学連デモ事件」(1969年12月24日)
 公道でのデモを警察に撮影されそれを権利侵害と訴えた「京都府学連デモ事件」(最高裁1969年12月24日)では、人物が無断撮影されるとき問題になるのが「肖像権」であるが、写される人物は「みだりに容姿を撮影される」ことが拒否できるとした初の判例である。
 その後、高速道路での監視装置で車や運転手が撮影された事例や、大阪のあいりん地区に設置された街頭カメラの事例で、無断撮影があっても「公共の福祉に適う」と認められれば制限を受けるとの判例が出されてきたが、肖像権は場所を問わず配慮されるべきものであることから、公共の場にいる人物であっても無断撮影はできない(注4)と解する。


6.他国の動向:オーストラリアの例
 日本と同じ時期にサービスがスタートしたオーストラリアでは、GSVが開始される前に、グーグル社と国の機関であるプライバシー専門会議との協議がなされており、同機関はGSVが持つ危険性として次の4点を指摘した。すなわち、D垢筌好函璽ーの被害にあう可能性や女性の一人暮らし、幼い子どもがいる家庭等が判明することによる「人々の安全に対するリスク」。⊃入や脱出を容易にすることによる「建物の安全に対するリスク」。8?Δ両譴任離謄蹐僕?僂気譴覯椎柔からの「公共の安全に対するリスク」。じ?Δ両譴任△辰討皀廛薀ぅ丱掘漆害の問題は生じ、ボカシを入れていても特定可能な場合はあるという「個人のプライバシーに対するリスク」(注5) である。


7.結論
 GSVは、既にわが国において普及しつつあり、楽しいものであるという側面も否定しない。

 しかし住居の中が撮影されている場合や顔や容貌が明瞭である場合、あるいは顔にボカシが入っていても個人が特定可能な場合、GSVはプライバシー侵害の可能性が濃厚で、実際に、公道でのキスシーンを撮影された高校生が、制服から学校を調べられ、個人が特定されてしまった例もある。またボカシを入れる作業についても、日本のGSVは機械で作業をしているので、誤った処理がなされることもあり、プライバシー侵害の違法性は強いと言わざるを得ない (注6)。

 GSV上で公開されたデータが事後的に削除されたとしても、第三者により容易にデータが複製できるインターネットの特性上、別サイトでその後もデータが公開されている場合がある。一旦ネット上に公開されたデータは、すべて削除することは不可能に近いことから、グーグルが主張する「事後規制」では、プライバシー侵害の問題は依然として残る。
 
 ただし、現状では、肖像権の権利侵害だけだと100万円を超える賠償は期待できず、5万円の賠償金を取るのに弁護士費用20万円ということもあり、権利侵害を訴えるのを諦める人も少なくない(注7)ことから、弁護士会や行政機関、または行政機関から独立した第三者機関などが、一般市民の権利主張の支援をしていく仕組みが必要であると思われる。

以上


注1)2007年5月に米国、2008年8月に日本でサービスが提供されはじめた。グーグルは、「人物の顔は画像処理加工し判別しにくくしている」と主張しているが、例えば、人物が二人並んでいると一人についてしか画像処理されず、もう一人の「顔」が明確に判別できる場合もある。

注2)「Googleの釈明によると、ストリートビュー撮影車に搭載された道路周辺のWi-Fiネットワーク名(SSID)とルータ固有識別番号(MACアドレス)の記録システムが、設定を誤って、近隣のユーザーが訪問していたWebサイトのログも取得していた。」(COMPUTERWORLD 2010年6月10日付)

注3)Technobahn GmbHhttp://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200808051827 」2008年8月5日付。

注4)牧野二郎「無断撮影! 肖像権侵害の相場と対策」(プレジデント 2009年8.3号)

注5)園田 寿「インターネットと人権-グーグル・ストリート・ビュー問題を中心に」
http://blhrri.org/info/koza/koza_0194.htm

注6)園田・前掲(注5)

注7)牧野二郎・前掲(注4)



For this very reason, make every effort to add to your faith goodness; and to goodness, knowledge;
and to knowledge, self-control; and to self-control, perseverance; and to perseverance, godliness;
and to godliness, brotherly kindness; and to brotherly kindness, love.”
(2 Peter 1:5-7)
 
こういうわけですから、あなたがたは、あらゆる努力をして、信仰には徳を、徳には知識を、
知識には自制を、自制には忍耐を、忍耐には敬虔を、
敬虔には兄弟愛を、兄弟愛には愛を加えなさい。」
(2ペテロ 1:5-7)